2006年に「ガーダ 〜パレスチナの詩〜」の上映を始めて、早や4年経ちました。「ガーダ 〜パレスチナの詩〜」はおかげさまでたくさんの方々に観ていただくことができました。これもひとえに応援していただいた皆様のおかげです。
  そして4年たった今、私は再び映画を作ろうとしています。2008年暮れから2009年1月にかけて3週間にわたるイスラエル軍のガザへの大規模侵攻がありました。私は過去20年あまり、パレスチナに通い続けていますが、このときの攻撃のように民間の家々をはじめ、モスク、工場、学校、オリーブ畑など、ありとあらゆるものが破壊され、3週間で1400人というたくさんのパレスチナの人たちが殺されたことは初めてでした。さらに犠牲となった人たちの大半は民間人であり、300人以上の子どもたちが含まれていたことに、大きなショックを受けました。
  2009年1月末、現地に入った私は、イスラエルによる軍事攻撃で親や兄弟を殺された子どもたちを追い始めました。その子どもたちは、いつまたイスラエル軍の攻撃があるかもしれないという不安におびえ、一方で自分たちが見た惨状を忘れることができず、あるいは忘れまいとして、夢と現実の狭間でもがき苦しんでいました。
  しかしその一方で、日本をはじめ、世界では日に日にガザのニュースは遠のいていきました。一方的な侵攻で、多くのパレスチナの人たちが亡くなっているにもかかわらず、その後の世界の反応はほとんどなく、忘れ去られようとしています。軍事侵攻が子どもたちの心にどんな傷跡を残すのかということを何としても伝えなければ、と思った私は目の前で親や兄弟を殺されたつらい経験を持つ子どもたちをテーマに、子どもたちの目線で描いたドキュメンタリー映画「ぼくたちは見た 〜ガザ・サムニ家の子どもたち〜」を制作することにしました。
  映画は、爆撃の下で子どもたちは何を経験したのか、そして爆撃のあと、どんな暮らしをしているのかということを、子どもたちの言葉と絵で描いています。それは同じ地球上で起きていることであり、遠い昔の話ではなく、今、このときも苦しんでいる子どもたちの話です。この子どもたちの心の叫びを、できるだけ多くの方々に耳を傾け、観ていただきたいと思います。

                 2010年9月
                 古居 みずえ